倒産

倒産の定義とは?

日常的に使用する「倒産」という言葉は、法律用語ではありません。一般的には「企業経営が行き詰まり、弁済しなければならない債務が弁済できなくなった状態」を指します。具体的には、以下に挙げる6つのケースのいずれかに該当すると認められた場合を「倒産」と定めます。

1 銀行取引停止処分を受ける※1

2 内内に整理する(代表者が倒産すると内外に表明した時)

3 裁判所に破産の申し立てをした時〜終了した時

4 裁判所に民事再生や会社更生の申し立てをしたとき〜終了した時

5 弁護士から債務整理の受任通知が発せられた時

 

3で、かつ、手続きが終了した時(配当or廃止)したときは最も明らかな倒産と言えます。

4についても、破産ではなく、かつ、いわゆる清算型でなく再生型ではありますが、倒産の言葉はあてはまるのでしょう。

2については、その後、株主総会による解散決議→清算結了まで行けば、会社が消滅しますが、未払いなどがあると法的には清算結了しますので、結局、債務者は基本的にいない状況となりますので、「整理する。倒産する」というだけでは物事は確定していません。

1や5は、それ自体では直ちに倒産というわけではありませんが、破産等に流れる可能性は相当高いとは言えます。

 

いずれにせよ、周囲への説明等の際は可能な限り正確な状況(と可能であれば今後の方針)を伝えることが重要です。

事実上の倒産とは?

事実上の倒産とは、法人または個人が、「法的倒産手続をとっていないものの、現実的には,支払不能・債務超過またはそれらに陥るおそれのある財務的破たん状態にある状態のこと」をいいます。例えば、手形不渡りによる銀行等取引停止処分を受けた場合や弁護士介入(受任通知)による支払停止がなされた場合などが挙げられます。

法律上の倒産と事実上の倒産

「倒産」という用語は、法律上、統一的な定義が規定されていませんが、一般的には、法人・個人が経済的に破たんし、債務を一般的・継続的に弁済することができなくなることを意味するとされています。

この倒産という概念には、「法律上の倒産」と「事実上の倒産」という区別があります。

法律上の倒産とは、破産手続・民事再生手続・会社更生手続などの法的手続において、倒産状態にあると認められた場合のことを意味します。

具体的にいえば、破産手続・特別清算手続・民事再生手続・会社更生手続の申し立てがあり、「裁判所による開始決定を受けた状態」のことをいうといえます。

これに対して、事実上の倒産とは、上記のような法的手続における倒産の認定を受けていないものの、現実的には、それらと同等の状態にあると言える場合のことです。

事実上の倒産の意味

前記のとおり、事実上の倒産とは、法的手続における倒産の認定を受けていないものの、現実的には、それらと同等の状態にあると言える状態にある場合のことをいいますが、具体的にはどのような状態なのかが問題となってきます。

この点については、法的倒産手続がどのような場合に開始されるのかを考える必要があるでしょう。

 

法的倒産手続の基本類型は破産手続ですが、この破産手続は、債務者が「支払不能」または「債務超過」の場合に開始されます。「支払停止」があった場合には、支払不能が推定されます。

 

支払不能とは、債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものについて、一般的かつ継続的に弁済をすることができない客観的状態にあることをいいます(破産法2条11号)。

 

支払不能を推定させる支払停止とは、債務者が資力欠乏のため債務の支払をすることができないと考えてその旨を明示的又は黙示的に外部に表示する行為のことをいいます(最一小判昭和60年2月14日集民144号109頁)。

 

また、債務超過とは、債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態、すなわち、債務額の総計が資産額の総計を超過している客観的状態にあることをいいます。

民事再生手続など再建型の法的倒産手続の場合は、支払不能または債務超過になるおそれがある場合に、手続が開始されます。

つまり、法的倒産手続においては、支払不能・債務超過またはそれらに陥るおそれのある財務的破たん状態にあることが、手続開始の原因、つまりは「倒産」であると考えられているということです。

そうすると、事実上の倒産とは、法的倒産手続をとっていないものの、現実的には、支払不能・債務超過またはそれらに陥るおそれのある財務的破たん状態にある状態のことを意味します。

事実上の倒産といえる場合

事実上の倒産状態にあると言える場合として、最も典型的なものとして、手形不渡りによる銀行等取引停止処分を受けた場合が挙げられます。

手形の不渡りによって銀行等における手形取引が停止されると、資金繰りが破たんするのが通常です。そうなると、支払不能またはそれに近い状態に陥りますから、事実上の倒産の例として挙げられるのです。

また、手形の不渡りでなくても、弁護士の介入によって支払いを停止した場合なども、支払停止によって支払不能が推定できますので、やはり事実上の倒産に当たるといえます。ただ、弁護士からの通知(いわゆる受任通知)が来ただけでは、内容もいくつかバリエーションがありますし(特定の債務の受任というケースもあります)。

また、受任通知が来たものの、数年以上音沙汰がなくなるようなケースも実際ありますので、その後の帰趨は一様ではありません。

その他、事業を停止して夜逃げをしてしまった場合なども、事実上の倒産といえるでしょう。

倒産法とはどのような法なのか?

倒産とは、一般的に、法人または個人が経済的に破綻し、弁済期にある債務を一般的継続的に弁済できない状態に陥ることをいいますが、この倒産に関し、「倒産法」と呼ばれる用語があります。

倒産法とは講学上の名称で、倒産法という名称の法律はありません。倒産法とは、破産法・民事再生法・会社更生法、さらには、会社法など倒産処理に関連する諸法令の総称です。

倒産法に含まれる法律

前記のとおり、倒産法には倒産処理に関する各種の法令が含まれます。代表的な倒産法に属する法律は、破産法・民事再生法・会社更生法・会社法でしょう。

この倒産法は、その最終的な目的によって「清算型」と「再建型」に区別することができます。

清算型の倒産法

各種倒産法のうちでも、最も基本的な法律は「破産法」です。破産法では、法人・個人の破産手続について定めています。

破産手続とは、破産者の財産を換価処分して、それによって得た金銭を債権者に弁済または配当するという裁判手続です。

会社法には、特別清算という手続が定められています。そのため、この会社法(の特別清算に関する規定の部分)も倒産法の1つに含まれます。

特別清算手続は、株式会社に特化した破産法の特別類型ともいえる手続で、やはり債務者の財産を換価処分して債権者に弁済または配当するという手続です。

破産法や会社法(特別清算の規定)では、最終的に法人・会社が清算されて消滅することになるため、清算型倒産法と呼ばれることがあります。

再建型の倒産法

倒産法の分類としては、清算型のほかに、再建型と呼ばれるタイプもあります。法人を消滅させずに再建させることを目的とする倒産法です。

再建型の倒産法の基本法は「民事再生法」ですが、株式会社にだけ認められる特別類型として「会社更生法」があります。いずれも、債務を減額して経営再建を目指すという制度です。

その他の倒産法

上記の破産法・民事再生法・会社更生法・会社法の他にも、倒産法に含めることができる法律はあります。

倒産法・倒産手続の目的

倒産法・倒産手続の目的ですが、各立場から異なる面があるとは思いますが、特に、債務者の支援という立場から申し上げれば、「債権者の利益と調和を取りながら、債務者の再生を図る」と言えると思います。

「日本は世界の中でも最も倒産法制が整備されている」と言われることがありますが、それは、主として、「債務者の再生」という面が大きいです。

どんなに債務が膨れ上がったとしても、破産や民事再生などを駆使すれば、およそ清算できない負債はないといえます。

例外としては、ごく一部の非免責債権(税金、養育費等)であり、かつ、破産によっても自由財産として99万円の現金を保有することが法的に可能です。

債務が返済できない事態となったことは残念ではありますが、日本においては再生の道が用意されていますので、債権者との調和の範囲を理解し、きちんと進めることが重要です。

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