弁護士が教える飲食業の倒産について

飲食業者の破産手続には入念な準備が必要です

1.閉店を決断するその前に

飲食業の成功の秘訣は、他店にないメニューの強み、コンセプトの明確化、好立地の確保、良質なサービスや接客、コストパフォーマンスの充実など、様々な要素があります。

しかし、これらすべての条件がそろっていても、新型コロナウイルス禍のように、長期間にわたって営業自体ができなくなってしまったり、客足が極端に遠のいてしまった場合などには、無理をして借り入れを重ねてまで営業を継続していくべきかどうか、深刻な場面に行き当たることがあります。

これまで好調に推移していた飲食店舗の業績が急に悪化する原因のほとんどは、他店舗の出店、交通事情の変動、社会情勢がもたらす影響など、外から生じるものといえます。手塩にかけた店舗の閉店を回避するためには、業績悪化の原因を的確に分析して、それが対処できるものかどうか、専門家のアドバイスを早い段階で受けることが重要です。

特に社会情勢の影響によって、業界全体が打撃を受けていることが問題となっている場合には、国や地方自治体が様々な補助金・助成金を提供することが期待できます。

2.破産手続がやむを得ない場合

飲食業の多くでは、店舗の賃料、人件費、仕入れ費用、設備のリース料、カード会社等の手数料等、様々なランニングコストがかかってくるため、業績が改善しない中で営業を継続し続けていくこと自体、経営者の負担を増大させていくことになります。

それだけでなく、開業資金や運転資金・設備投資等を借り入れで賄っていた場合には、その返済の目途も立たなくなります。借り入れを返済するために、さらに借り入れを重ねていくことは、根本的な解決にならないばかりか、経営者の負担をますます増やすばかりとなってしまいます。

このように業績の改善が具体的に見込めず、ランニングコストの負担が売上げを上回る状況が継続するに至ったときには、思い切って閉店を決断することも必要です。

負債を抱えた状態で店舗を閉店する場合には、この負債自体を整理する必要があります。

もちろん、手元資金などで賄えるのが理想ではありますが、これが難しい場合の、具体的かつ現実的な方法として、法的清算、中でも最も確実な手段として破産手続を行うことが考えられます。

自己破産手続は、裁判所に提出するための書類を整えることが重要であることはもちろんですが、飲食業の場合、書類さえ整えれば良いというわけではありません。

・複数の店舗を営業している場合の閉店スケジュール
・従業員の解雇(雇止め)手順
・什器備品やリース物件の処理 ・残存している食材の処理
・店舗の明渡義務
・場合によっては資産や事業の譲渡

こういったことがらは、破産申立後に行うこともありますが、混乱が拡大することも多く、事前に処理しておくことが通常は理想です。 いずれにせよ、裁判所における手続きにおいて、いずれ破産管財人が選任された際に、スムーズに引き継ぎを行い、誤解を生まずに手続を進めていく上でも、破産申立の段階で入念に準備を整える必要があります。また、条件さえ整えば、店舗の営業自体は、信頼できる後継者や第三者に継承(M&A含む)してもらうという方法が採れることもあります。

飲食業の破産は弁護士にご相談下さい

当事務所の会社再生・清算に関する専門知識と経験をもって、負債処理の悩みを、早期に、かつ、劇的に解消してさしあげたいと心より願っております。専門性が問われる分野です。担当する弁護士によって、

・初回相談から解決までのスピード、
・従業員、取引先等との関係性、
・手元に残っている資産の確保・運用方法

をはじめとして、非常に大きな差が生じ、経営者やご家族の再出発を大きく左右することとなります。
会社経営者のために、会社再生・清算にあたっている弁護士をお探しでしたら、弁護士法人永代共同法律事務所(東京)にぜひご相談ください。

永代共同法律事務所の解決事例

飲食店経営がうまくいかず資金がショートしたが、うまく破産できた事例

業種:飲食事業

負債総額:約25000万円

従業員数:80名

ご依頼の背景

 依頼者は飲食店を7店舗経営していたが、徐々に客数が減少し、経営がうまくいかなくなっていた。経営状態が悪化してからは、採算の合わない店舗をたたむなどして対応していたが、最終的には資金ショートを起こし、家賃が払えなくなった結果、大家より締め出しを受けたため相談に来られた。

 当事務所が受任をし、まずはテナントを大家さんに明け渡すために、厨房のリースの返却や皿類などを引き取ってもらえないか交渉をした。交渉は難航をしたが、弁護士が現場に足を運び、粘り強く交渉を続けた結果、なんとか引き取ってもらうことができた。テナントの明け渡しが完了しないと小額管財事件として申立てができないため、非常に重要であった。

 従業員の給料について、弁護士が必要書類の準備、立替払い制度を活用し、支払を完了させた。

 破産の申立てを行った段階では、資産はほとんど残っていなかったため、従業員の未払給与の立替払い制度関連を除いては破産管財人からも多くの要求を受けず、決着できた。

 代表者の自己破産費用は親に負担をしてもらい、申し立てを行うことが出来た。

担当弁護士の所感

 解決にあたっては、店舗ごとに異なる賃金台帳などの書類収集のため、遠方まで弁護士が出向き、回収した。

 ご相談に来られた際の依頼者の預貯金は10万円にも満たない状態だった。流通業・飲食店のような現金商売をしている場合には、気付いたら手元の運転資金がなくなることがあるので、注意が必要。破産申立ての段階ではまとまった資金が必要になるので、破産するための資金を残しておかなければならない。

競合が多く事業継続を断念した飲食店の法人破産事例

業種:飲食事業

負債総額:約4500万円

従業員数:30

ご依頼の背景

 開業時は、チラシの効果で売り上げは好調だった。そのうち注文をこなすことばかりで人手不足になり、次のチラシが配れず、売り上げが下がった。

 さらに、代表者が病気のため数カ月入院してしまい、その間の売り上げが激減。

 競合店が多い飲食店なので、これ以上は続けられないと思い相談に来られた。

担当弁護士の所感

 弁護士が代理人となり、代表者に代わって債権者と従業員に対し、 同社が破綻に至った経緯について誠意をもって説明を行った。

法人破産については、破産手続きに必要な費用は売上が多い時期の売上金を見込んだ。
また、事業譲渡の可能性も含め、破産の準備を進めました。
これにより、破産手続きの申し立てを行い、約7ヶ月間の裁判手続きを経て、無事に破産手続きを完了することができた。

代表者は自宅を残すため、家族の援助を受けつつ、個人再生手続きを選んだ。現在は新たな職業に就くことができ、再生計画案に基づいた弁済を続けている。

新型コロナウイルスや近隣の競争激化で業績が悪化した飲食店が、1カ月でのスピード申立できた事例

当事務所によく寄せられるご質問

複数店舗を経営している飲食業が破産するときに注意するべきことは何ですか。

数店舗を経営している場合,破産の事前準備段階において,会社全体の収支状況のほか,店舗ごとの収支状況を把握することが重要です。また,店舗ごとに,店舗賃貸借契約等の内容,設備,従業員の把握等をしておくことも重要であると言えます。

 その上で,破産申立時期を見据えながら,店舗の閉店スケジュールを組んでいくことになります。店舗ごとに順次閉店していくのか,一斉に閉店するのかといったことも検討していくことになります。

 これらの検討には,法律専門家の関与が不可欠であると言えます。

 例えば,ある店舗に関する未払債務だけを支払い続け,別の店舗に関する未払債務は支払いをしなかったということが問題となる場合もあります。

 破産の事前準備段階においては,ご本人としては問題がないと考えて行ったことが,実は,法的に問題がある行為だった,ということがあり得ますので,十分注意が必要です。特に,複数店舗を経営している場合,店舗ごとに別異の取り扱いをして良い場面なのか,そうではないのかといったことに注意する必要があります。

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