弁護士が教える建設業の倒産について
建設業の会社破産の特徴
①債権者に取引先(下請)が多く、かつ、1社あたりの債権額が大きい
建設業の破産の特徴として、債権者に取引先が多いこと等があげられます。
そのため、破産の影響も小さくありません。
②乱暴な取り立ても生じ得る
金融機関などであれば、未払いや倒産なども慣れていたりします。また、日常業務での接点などはないことが通常です。
他方で、建設業の買掛の場合は、債権額の大きいことに加え、日常の業務での接点なども多く、感情が高ぶることも多いです。緊張感の高い現場仕事であることもあり、乱暴な取り立てとなってしまっていることもあります。
③仕掛中の工事があるケースもある
建設業者が破産する場合の問題として特に注意しなければならないのは、仕掛中工事の完成、下請業者の作業の続行等の関係調整、完成工事のアフターケア等です。
事業資産(法人破産など)までの流れ
本質的にはその他の業種と異なることはありません。
ただ、仕掛中の工事の扱いは、注意が必要です。工事を完了するのか(できるのか)、従業員や工事関係者などへの告知も慎重に行う必要があります。
前受け金を受け取っている場合、施主(元受け)に返金義務が生じる可能性があります(一定の場合には、財団債権として保護が厚くなる可能性もあります。
弁護士による建設業の解決事例
①事業のスリム化による事業再生事例
業種:建設業
負債総額:約5億円
業績悪化理由 受注不振、収支悪化
ご依頼の背景
公共工事等の実績、歴史がある建設会社であったが、公共工事の受注減等により売上減少にあったが、抜本的な対策を取らないまま、負債は増加していった。新規事業を試みるも、慣れない業務で経費がかさみ、逆に収支を圧迫していた。
事業清算の話も出始めていたが、本社移転をはじめとする抜本的なBS改善、早期退職制度を活用したスリム化等によるPL改善、滞留債権の回収などを通じて立ち直り、堅実な成長を再開した。
弁護士の所感
ギリギリのタイミングで再生に着手すると、目の前のキャッシュフローや資産譲渡価格の低額化、従業員の離反などを招くことが多いですが、早期かつ当初には難色を示していた事項も、経営陣の英断で実行に移せたことが成功の要因だと思います。
②売り上げは過去最高を記録するも、黒字倒産に陥る中、早期対応により混乱を最小限とした建設会社の事例
負債総額:約3億円
業績悪化理由:大口取引先の連鎖倒産、受注先行に伴うキャッシュフロー悪化
ご依頼の背景
売上は順調であったが、大口取引先との関係で数千万円に上る債権が焦げ付いたこと、受注先行に伴いキャッシュフローが悪化していたこと等が原因となった。
仕掛中の案件も少なくなく、混乱は避けられなかったが、代表者やご家族等、従業員らと協力の結果、約2カ月で申立を行い、スピード解決となった。
弁護士の所感
売上自体は過去最高で、黒字であるにもかかわらず倒産に至る、まさに黒字倒産の案件です。キャッシュフローの大切さが身に沁みます。
また、よく言われることですが、決済までに時間を要する売掛金、買掛金が生じる業種は信用取引の側面が大きく、また、1件あたりの取引、取引先に依存する体質の場合も少なくなく、民事再生が困難な場合も少なくありません。業種、当該企業にとってベストな計画を検討する必要があります。