弁護士が教えるフランチャイズの倒産について

フランチャイズ(加盟店)の破産の特徴

(1)フランチャイズのコストと財務の悪化

 フランチャイズの多くでは、本部に対するロイヤリティや仕入コスト、店舗の賃料、人件費、仕入れ費用、設備のリース料、カード会社等の手数料等、様々なランニングコストがかかってくるため、業績が改善しない中で営業を継続し続けていくこと自体、経営者の負担を増大させていくことになります。

 それだけでなく、加盟金を含む、開業資金や運転資金・設備投資等を借り入れで賄っていた場合には、その返済の目途も立たなくなります。借り入れを返済するために、さらに借り入れを重ねていくことは、根本的な解決にならないばかりか、経営者の負担をますます増やすばかりとなってしまいます。

(2)閉店・撤退

 このように業績の改善が具体的に見込めず、ランニングコストの負担が売上げを上回る状況が継続するに至ったときには、思い切って閉店を決断することも必要です。

 負債を抱えた状態で店舗を閉店する場合には、この負債自体を整理する必要があります。

 もちろん、手元資金などで賄えるのが理想ではありますが、これが難しい場合の、具体的かつ現実的な方法として、法的清算、中でも最も確実な手段として破産手続を行うことが考えられます

 自己破産手続は、裁判所に提出するための書類を整えることが重要であることはもちろんですが、フランチャイズの場合、書類さえ整えれば良いというわけではありません。

(3)フランチャイズ加盟店の倒産を取り巻く状況

以下のような事項を、法的ルールに沿って実施していく必要があります

A フランチャイズ契約の終了

 できれば、期間満了か合意で終了することが望ましいです。

 合意で終了するケースも多いですが、フランチャイズ契約の場合、契約が制限されていたりするケースもあります。

 加盟店が破産手続を開始するほどに経済的に逼迫しているのであれば、破産手続の開始以前に、本部への債務不履行(ロイヤリティや、商品・現在料等の代金の未払い等)が生じている場合も多いかと思います。それを根拠に解除される例も多いです。

 また、破産や倒産、事業停止などが解除事由(契約終了事由)となっている場合(特約)、本部は、加盟店の破産を理由にFC契約は解約できることになります。
 なお、破産手続きが始まるまでに契約が終了しない場合は、破産管財人には、契約を履行して営業を継続するか、契約を解約するかを選択する権利が認められているため(破産法53条)、FC契約が継続するか否かは、破産管財人の選択に従うことになります。

B その他退店・事業撤退に関する項目

①債権者(銀行、リース、仕入れ先、テナント貸主、税金、親族等からの借入等)の対応

②複数の店舗を営業している場合の閉店スケジュール

③従業員の解雇(雇止め)手順

④什器備品やリース物件の処理 ・残存している食材の処理

⑤店舗の明渡義務

⑥場合によっては資産や事業の譲渡

(4)フランチャイズ契約終了後

A 加盟店が法人である場合

 破産によって加盟店は解散し、法人格が消滅することになるため、義務を負う主体がなくなることになり、拘束力はなくなります。仮に法人たる加盟店に所属していた代表者や従業員が、競業を開始したり、ノウハウを漏洩したりした場合に、その責任を追及するためには、連帯保証に基づく責任追及をする場合があります

 また、契約に基づく効力ではなく、民法上の一般法理である不法行為等に基づく責任を追及することもあります。
 このような事態は、加盟店の破産に限らず起こりうるものですが、加盟店が法人である場合に、競業やノウハウの流出を防ぐため、競業禁止義務や秘密保持義務の効力が及ぶ人的範囲を、法人たる加盟店のみならず、その代表者やその親族、従業員などに拡張させて契約書を規定している例も見られます。

 社長様としては、これらに抵触しない形で、再建を試みることが重要です。

B 加盟店が個人の場合

 加盟店の破産によっても加盟店の人格が消滅するわけではないので、契約において定められた期間は、競業や秘密保持の義務が引き続き課せられると考えられます。

フランチャイズ(加盟店)の破産のポイント

こういったことがらは、破産申立後に行うこともありますが、混乱が拡大することも多く、事前に処理しておくことが通常は理想です。

 いずれにせよ、裁判所における手続きにおいて、いずれ破産管財人が選任された際に、スムーズに引き継ぎを行い、誤解を生まずに手続を進めていく上でも、破産申立の段階で入念に準備を整える必要があります。

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弁護士によるフランチャイズ業の解決事例

業種 販売(フランチャイズ)
負債総額 債権者150名程度、約3億円

  代表者は、数年間モバイル通信販売業者で勤務し、ノウハウを取得した後に独立開業し、勤務していた会社とフランチャイズ契約を締結した。フランチャイザーの強い勧めや指導により多店舗展開をし、最多時には10店舗近い支店を開店した。

 もっとも、各店舗の毎月の収支は概ね黒字だったものの、その額は売上高に比してごく僅かであり、店舗開設に伴う諸費用のための借入を弁済するには十分なものではなかった。
また、モバイル通信機器の販売については、その販売手法について管轄の総務省の政策的な意向の影響を強く受けることから、売上が大きく減少した期間も長くあった。

 さらに、本件破産事件では、代表者がもともとフランチャイザーに雇用されていたこともあって、特に弱い立場に立たされていた。そのため、両者間での決済方法等の面で事実上不利益な変更をされることもあり、結果として、営業資金の資金繰りに困るようにもなった。

 代表者個人の資産を会社につぎ込むなど尽力したが、業績が好転することはなく、税金、給与の遅滞も発生したため破産を決意した。

 また本件においては、従業員が多数おり、未払賃金立替制度の速やかな手続きが必要となった事案であるが、弁護士が全従業員向けの説明会で迅速に説明を行ったことにより、大きな混乱は起こらなかった。

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